これは批評ではありません。

布教と悪口とメモ/えんためはなんでもマル

いのちの洗濯劇場『×(ペケ)な人々』

チラシがとってもとっても可愛いのですよ!!!

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ものすごくタイミングもよかったんだと思いました。私にとって。

刺さった、という言葉とはまた違うんですけど、会場に入った瞬間から家に帰るその時まで幸せが持続していくお芝居でした。

 

お話。舞台は映像研究会の部室。見た目”いかにも”な阿×(あぺけ)が部室でうんうん脚本書いているところに、入部希望の新入生・星野ちゃんがやってくる。彼女と話してから阿×の様子がおかしくて、部員たちはその原因について頭を悩ませる中で、次第に阿×の秘密を知ってお互いに衝突してしまう、みたいな感じ、です。

 

思ったこと。

まず舞台装置がよかったです。脚本の升さんが大学時代を過ごした演劇部の部室がモデルということで、壁に貼られたチラシや折りたたみ式のテーブル(公民館とかでみるやつ)、雑多に置かれた漫画のチョイスから妙に家庭的な電気ポットとお洒落なティーセットが混在している感じなんかまで、冴えない文化系サークルの出で立ちが絶妙に再現されていました。雑多な雰囲気の中に、めちゃめちゃクオリティの(これまた絶妙に)高い自主制作映画のポスターがあったり、こっそり『人魚は笑う』のパロディポスターが潜んでいる遊び心も抜群!笑 そして何より胸を打たれたのは冷房です。おそらく常設されている褪せた冷房機が(反対側にもあったし)、完璧に部室のセット仕立てに利用されていて感動しました。冷泉荘で観るお芝居はハコを上手く使ってるな、と思う作品に当たることが多いのですが、その他デハケなども含めて今回が一番でした。

それから役者さん。キャスティングに隙がなくて、本当にどの方も役にハマっていました(そして上手い)。中でもとりわけ好きだったのが、先崎先輩です。あーいるよなって、感じの。およそ悪意というものがなくて、誰にでも優しくて、でも人と関わることに不器用で、多分小中高教室の隅にいて部室でだけ羽を伸ばしていたような空気。入ってきた瞬間から、阿×に思いの丈をぶつけて部屋を飛び出す瞬間まで、まったく目が離せませんでした。ちるさん(役者さん)の素の姿ががぜん気になります......!!

脚本はやっぱり上手くて、意外性はあまりないけれど、会話の引き算や展開の落としどころといったテクニックやセンスが効いていて、戯曲賞候補作はレベルが違うなと感じました。特に、一悶着のあと林田先輩が出て行き部屋に残された星野と阿×の会話が好きでした。(星「お邪魔でしたか」阿×「ああ、うん」みたいな。違うかも。あー)自分なんかは外しをやんなきゃ!と頭ではわかっていてもバチバチに嵌めた展開を広げてしまうので、反省するとともにこういう会話が書きたいと思いました。

 

それで、今回感じた”幸せ”ってどこから来たのかなーって考えると、やっぱりバランスのよさかなーという結論に至りました。こういうお芝居、と言うのは失礼かもしれないのですが、こういう脚本がしっかりして役者に粗がなく装置も音響も照明も美術も同じ方向を目指して正しく機能している現実を指向したタイプのお芝居は、意外とありません。観劇三昧とかを眺めていると似た雰囲気のものがむしろ多い気がするんですけど、私自身はあんまり見れてなくて、だからすごく嬉しくなったし終始安定した気持ちで対峙することができました。福岡で、こんなお芝居を定期的に観られたら、多少調子が悪い時も羽やすめのような気持ちで心から楽しめるだろうな、そんな多幸感がありました。最初の演出で、部室でそんなぐるぐる動きまわったら危なくない!?みたいなヒヤっとはしたんですけどね。笑

 

会場から早く逃げないと死んじゃう持病があるのでさっさと飛び出してしまい、戯曲を購入し損ねてしまったのはとっても後悔。思い出を心のレンジで温め続けようと思います。そういえば、星野ちゃんが白ニットと赤チェックスカートで登場した時のお前がA級戦犯感よかったな~。ちーん(レンジが仕上がる音)。

 

客ラスはまってます。

 

※これは批評ではありません。

※これは批評ではありません。

 

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