これは批評ではありません。

布教と悪口とメモ/えんためはなんでもマル

Mr.daydreamer#3『人魚は笑う』

何かを観たら誰かに感想を伝えたくなるけれど、近頃さっぱり誰に話したらいいのかわからないのでこうやって書き留めてみることにしました。すぐ飽きるかもしれません。

 

でいどりさんの公演を見ました。演劇祭、#2に次いで3回目です。

mr000daydreamer.webnode.jp

 

お話は、高名な芸術家である父の陰で自らもまた芸術家としてくすぶる少年が、お家の事情で屋敷に匿われた無垢な少女に心惹かれるも、彼女が父親の「作品」としてその命を終えるという過酷な運命に抗いきれず、少女を失い、その無念の情に苛烈に身を焦がしながら生きていくことを誓う、みたいな感じ。少女は「人魚」を自称するのだけど、それは父親による刷り込みで、彼女を作品として昇華させるための嘘。少年の目の前で、至福の喜びを感じながら水槽に身を投げる少女の最後の舞は切なくも美しかったです。

 

ぐっときたところ。

構図がいいな、と思う場面が多かった。こだわりが感じられた。特に、地下室で父親の秘密を知ってしまう場面でランプ(#2のやつだ!)を持ち出しての立体感のある演出が印象的だった。あと、主演の真結さんがとてもよかった。序盤の父親に捉えられるシーンは、全身の力が抜けるその瞬間の、異様な脱力ぶりが人ならざる佇まいで、以降全編を通じてその異質の牙城は崩れることがなく終わりまで魅了されてしまった。いつも、どこか、空虚。そんな感じ。すごいだいせんぱいだーと思った。

 

エンディングに向かうにつれて引き込まれていったけれど、逆に序盤の集中力は多少散漫でした。それはある種の型が見えてしまったからということでもあるし、一人苦悩する主人公の気持ちに添うことができなかったからということでもあります(私はでいどりさんはひとりで痛そうだと感じるし、そういう意味でとてもらしかった)。後半は少女を介して痛みを分かち合えたのかなと。そうしてメリバというものを叩き込まれたのでした。

 

基本的にわかりやすいものが好きなので、印象を叩き連ねていくような普段のでいどりさんよりは、物語を成しているこの作品は個人的に見やすかったです。しかしなにより同じ団体の中で、複数の脚本家・演出家を抱えているというのは、多面的で素敵ですね。

 

※これは批評ではありません。

※これは批評ではありません。